「お江戸日本橋」 民謡

【歌詞】

➀お江戸日本橋 七つだち 初のぼり   

  (おえどにほんばし ななつだち はつのぼり)

  行列そろえて アレワイサノサ コチャ 

  (ぎょうれつそろえて)

  高輪夜あけて 提灯消す         

  (たかなわよあけて ちょうちんけす)

  コチャエ コチャエ

 

②六郷わたれば 川崎の 万年屋     

  (ろくごうわたれば かわさきの まんねんや)

  つるとかめとの 米まんじゅう コチャ  

  (つると かめの よねまんじゅう)

  神奈川いそいで 保土谷へ       

  (かながわ いそいで ほどがやへ)

  コチャエ コチャエ

 

【楽譜】

 

『お江戸日本橋』は、東海道五十三次の道中を歌詞に

歌い込んだ日本の民謡です。

東京・日本橋を出発して、小田原、箱根、沼津、浜松、岡崎、

亀山、草津、そして京都・三条大橋までまで、124里8丁、

およそ500kmに渡る東海道中の地名・名所が次々と登場します。

今回はそのうちのふたつを歌いました。

 

『お江戸日本橋』の原曲・ルーツは、江戸幕府の第11代征夷大将軍

徳川 家斉(いえなり)、第12代将軍・徳川 家慶(いえよし)の

時代までさかのぼります。

天保期の当時流行っていた俗謡『はねだ節』が、やがて

「コチャエ、コチャエ」の囃子詞(はやしことば)を伴った

『コチャエ節』となり、さらに東海道五十三次の替え歌が作られ、

『お江戸日本橋』が誕生したそうです。

 

江戸時代には、時刻を知らせるために鐘が打ち鳴らされ、

人々は時刻をこの時鐘の数で呼んでいた。

陰陽思想に基づき鐘は二時間毎に9の倍数で打たれ、

本来なら9,18,27,36となるところを十の位は省略して、

昼をスタートとして一の位の9,8,7,6と鳴らされる。

この時鐘での呼び名に基づけば、『お江戸日本橋』の

冒頭の歌詞にある「七つ立ち」とは、「暁7つ」、

すなわち午前4時前後の時間帯を指すことになります。

さらに歌詞には「夜明けの提灯消す」とあり、まだ夜が

明けない暗闇の中を提灯を持って出発していることが分かります。

ちなみに、14時前後に鐘が8回鳴らされていた「昼8つ」は、

現代の間食タイム「おやつ」の語源ともなっています。

東海道の宿場には、かならず女郎屋がありました。

旅の男にとって、土地々々の女を買うのも大きな楽しみだったのです。

「こちゃえ、こちゃえ」というのは、「こちらへどうぞー!」と

女郎が客を呼び込むかけ声なのです。

明治か大正になって、子供向けの歌に書き改められたのですが、

女郎が客を引く「こちゃえ」だけはそのまま残ってしまったそうです。

米饅頭は川崎宿鶴見川に近い市場村(現在の鶴見市場)あたりで

売られていたもので、文化(1804-18)の頃川崎宿には

饅頭屋が7軒あり、その中の鶴屋と亀屋が米饅頭で

知られていたようです。

日本橋東海道の起点ですから、旅に出立する早朝の日本橋は、

歌川広重の「東海道五十三次」の第一枚目である第一作目には

実に相応しいと言えるでしょう。

ちなみに東海道の終点は京都三条大橋です。

この場面は朝焼けの方角を臨んでいますから、橋の南詰の木戸、

つまり東海道側から中山道の方を向いて描かれています。

絵図の手前の左右には、木戸が開かれれているのが見えます。

一般の町木戸が開くのは卯の刻の明け六つでしたが、日本橋

木戸が開くのは寅の刻の七つ、おおよそ午前4時頃でした。

時刻を伝えるのは時の鐘で、まず最初に注意を喚起する捨て鐘を

3回鳴らし、その後で時刻の数だけ鳴らすのです。

日本橋では本石(ほんごく)町三丁目(現在の日本橋本町四丁目)に

鐘があり、それを合図に木戸が開かれました。

 江戸末期から明治期にかけて流行した俗謡『お江戸日本橋』の

一番には、「お江戸日本橋 七つ立ち 初のぼり 行列そろえて

 あれわいさのさ こちゃ高輪 夜明けの提灯消す こちゃえ こちゃえ」

と歌われています。

「初のぼり」とは、直接的には初めて京の都に行くことですが、

具体的には10年近く勤めた丁稚が長期休暇を与えられて、

上方の故郷に帰京することを意味しています。

その丁稚たちや未明に江戸を出立する人達が、「行列そろえて」

木戸の開くのを待っていたのでしょうか。

木戸が開くのを今か今かと待つ人達は、たくさんいたことでしょう。

日本橋には有名な越後屋呉服店など多くの大店が軒を

並べていましたから、初のぼりを許された丁稚の若者も

たくさんいたことでしょう。

「行列そろえて」は、初のぼりをする若者たちを、先輩格の

手代が途中まで引率して行く様子を表したものという解説もありました。

 

動画はこちらです。↓

 

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