「ひとつかえ」傾城阿波鳴門(けいせいあわのなると)

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【歌詞】

ひとつかえ ひしゃくに おいずる つえにかさ 

じゅんれいすがたで ちちははを たずにょーかいな

ふたつかえ ふだらく きしうつ みくまのの 

なちさん おやまは おとたこー ひびこーかいな 

みっつかえ みるより おゆみは たちあがり 

こぼんにしらげのこころざし しんじょうかいな

よっつかえ ようこそ じゅんれい まいらんせ 

さだめしつれしゅーは おやごたち どうぎょうかいな

いつつかえ いえいえ わたしはひとりたび 

ととさんかかさん かおしらず あいたいわいな

むっつかえ むりむり さしだす わらじせん 

しょうしょうばかりの こころざし しんじょうかいな

ななつかえ なくなくわかれる わがむすめ 

のびあがり すりあがり みおくって いなそうかいな

やっつかえ やまこえうみこえ たにをこえ 

かんなんしてきた わがむすめ いなさりょかいな

ここのつかえ ここのつなるこの てをひいて 

じゅーろーべーやかたの おもてぐち つれこもーかいな

とーかえ とくしまじょうかの じゅーろーべーは 

わがことしらずに じゅんれいを おくろーかいな

 

【楽譜】

 

 

ひとつかえ」は手まり歌 他 盆踊りの口説き(くどき)です。

浄瑠璃「傾城阿波鳴門(けいせいあわのなると)」に題材をとったもの だそうです。

数え歌になっています。

以下、調べてネットから引用したものです。

 

原作では浪花の玉造の町屋が舞台となるが、現在上演される際には どんどろ大師の境内に改変されている。

両親に生き別れとなっている幼い娘、おつるは父母を探し求めて 阿波の国から大坂にやってくる。

偶然おつるが訪れたのは父の 十郎兵衛と母のお弓の住む家であった。

十郎兵衛は主人のための金策に奔走しており、その留守にやってきた おつるとお弓は我が子と知りながら、事情があって親子の名乗りを しないまま行かせる。

十郎兵衛は道で出会ったおつるが大金を 所持していたため、我が子と知らずに殺して、その金を奪う。

そのことを知ったお弓は、夫十郎兵衛とともに、悲嘆にくれる。

なんとも悲しい物語ですね。

 

【歌詞の解読】

 

①柄杓に笈摺、杖に笠。巡礼姿で父母を尋にょうかいな  

(江戸時代、抜け参りは親や主人の許可なしに、こっそりと家を抜け出して伊勢参りをすることだが、この行いだけは社会的にとがめられないどころか、道中見かけた人は金品や食物を 恵んでやる習俗があった。当時、旅に笠は必需品だが抜け参りには柄杓も持つのが普通の形で「抜け参り、人の 情けも汲んでいき」というように、恵んでもらう金銭は柄杓で受け取ることになっていた。「笠をば、かぶるものとせず」の方も柄杓では受けきれないものを笠で受け取っている様子を詠んだものである。笈摺 おいずる=巡礼が着物の 上に着るひとえの袖なし羽織)

 

補陀落 岸うつ三熊野の那智さんお山は音高ー響こーかいな  

補陀落 ふだらく→インドの南端にある観音の住む山を言う。わが国では霊場にこの名を用いる。三熊野とは熊野三山すなわち熊野那智大社熊野本宮大社、熊野速玉大社のこと。神仏習合の思想では別名、熊野三所権現とも呼ばれる。青岸渡寺熊野那智大社に隣接し、滝の傍に建てられた。那智の滝は飛滝神社のご神体であり、飛滝大権現であり、本地は千手観音とされてきた。この滝もまた神であり観音菩薩なのである。直下130mの滝の音が高く響いています。)

 

③見るよりお弓は立ち上がり こ盆に精米の志 進上かいな  

(「精米=しらげ」は精米した白米のことで盆に一握りの白米を載せて差し出し巡礼はそれを柄杓に入れてもらう。「進上」=差し上げる事 )

 

④ようこそ巡礼 参らんせ 定めし連れ衆は親御たち 同行かいな

(親子連れの巡礼も多かったことから、親たちと一緒なのか聞いている)

 

⑤いえいえ 私は一人旅 父さん母さん 顔知らず会いたいわいな  

(小さな子どもが一人で旅をする手段として、巡礼は有効であったと思われる)

 

⑥無理無理 差し出す草鞋銭 少々ばかりの志 進上かいな  

(わらじせん→草鞋を買うぐらいの金。旅費としてのわずかな金銭。「進上」=差し上げる事 )

 

⑦泣く泣く別れる我が娘 伸びあがり すりあがり 見送って 去なそうかいな

 (去なす いなす=去らせる。行かせる。)

 

⑧山越え海越え 谷を越え 艱難して来た 我が娘 去なさりょかいな  

 (艱難 かんなん=困難にあって苦しみ悩むこと。つらいこと。)

 

⑨九つなる子の手を引いて 十郎兵衛館の表口 連れ込もーかいな  

 (十郎兵衛は途中、おつるに会い、我が子と知らず金を奪おうとする)

 

徳島城下の十郎兵衛は 我が子と知らずに 巡礼を送ろうかいな  

 (十郎兵衛はおつるを殺して、その金を奪う。そのことを知ったお弓は夫、十郎兵衛とともに悲嘆にくれる。)

 

とても切なくて、悲しい物語ですね。